ネバーランドそぼ降る寂しい晩雨

 

一日悩んだ挙句、書き残しておくことにしました。ちょっと視点が偏ってるかもしれない。ベクペンさんや今回のカムバを楽しみに/楽しんでいる人にとっては「テメエが言うな」みたいな内容もあるかもなので…興味ない人はこんな文章読む前にYouTube見てきて…てか私のブログ読む暇あるならMVをキメて…ストリーミングして…マジで…頼む…ばんびばん・びー…

 

 


BAEKHYUN 백현 'Bambi' MV

 

 すごいすきだよこのMV!!!(大声)

 

 

 

 

 

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―――男30のダンディズムは悲しい

 

 

わたしはエリのなかでも根っからのジョンデペンでして、実のところ今回のカムバは私は全くのノーマークでした(勘のいい人は察してほしい)。加えて、SHINeeのオニュさんのゆるゆるマイワールドに夢中だったし、エネルギーはむしろしうちゃんに注ぎたかったし、チャニョルちゃん入隊の直後というざわつく時期だったこともあって、あんまり乗り切れずにいました。

ティザーは毎朝見ていたんだけど、それに対して逐一コメントするという気分でもなく、タイトル曲に関する記事を読んでも「ほおん…」みたいな感じで、ちょっと自分とは遠いところで起きている出来事のように見ていました。

おそらく、過去2作の雰囲気を考えたときに、「ああ、また優しい毒を盛られるんだな…」みたいな浅はかな予感もあったのだと思います。ベッキョンのエリだけを見つめるゆえの優しい毒をドクドクと注がれるんだろうなと。

 

それが、もう、MVを見た瞬間に、いい意味でぜんぶひっくり返されたようでした。

 

しうちゃんに「Thrty's Sexy>.<」って言われていたけどまさにそんな感じ…が、想像以上にダンディズムだったんだよな。ダンディズム…なんていうんだろう…いままで見てきた「みんなの理想の彼氏」を完璧に演じ切るベッキョンではなく、ただの30歳の男としての美学を追求したかったんだろうなと…これが1・2集と全く違う角度から脳にぶち込まれて、もう、衝撃です。

 

YouTubeの設定で日本語字幕を表示するようにしたまま初回を再生してしまったので、翻訳をばっちり読み取りながらきいてしまったんですが、この歌詞世界がすごいなと…「童話」的でありつつ、艶っぽさも分かる。かわいいバンビちゃんを追いかける少年のようでもあり、夜雨に打たれつつ愛に縋り付こうとする寂しい男の情のようでもあり、ネバーランド(エクソプラネット?)に住まうティンカーベル(エリ?)を恋しく思う歌でもあるなと…。

「ba」「pa」「m」「bi」「pi」の音韻が気持ちいいってのもあると思う。ピコ太郎の「PPAP」があれだけブレイクしたのは「p」という発音の心地よさが多くの言語に共通しているからだ、みたいな分析を誰かがしていたのを思い出した(たしか言語学者の人がけっこうまじめに分析してて「しゅげ~!?」とびっくりしたのを覚えてる)。

 

 

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―――ようこそ、世界はここにあります

 

カムバするからって久しぶりに彼のソロ1・2集とイル版プレイリストを聴き直していたんだけど、今思うと1集は自分の表現を成立させるために必死にあがいてる感じで、2集は「エリの望む姿ならなんでもみせてあげる」という欲心に溢れてる感じだなと思ったの。イル版は、「男子アイドル」の王道を進みながらしれっとセクシーを忍び込ませつつ様子をうかがってる感じ(あの内容を母語で歌わなかったわけで…)。

別の言い方をすれば、1集は付き合ってないけど一緒にドライブはする仲、2集はゲームセンターかどこかでデートして気を惹く、イル版はちょっと駆け引きしてみた。そんな感じで表面的に関係を発展させてきて、3集でとうとう本性を見せやがったな…と。本性というか自我ですかね。「俺はこういうことをしたいんだ」ということを、衒いなく提示してきた。これまで見てきた自信とは全然違う。「どれがいい?どれが好き?」じゃない。他人の望むイメージよりも自分の理想を優先させたんだなあと。そしてそれがめちゃくちゃかっこいい。私はそういうすり切れるような切実さが好きです。

 

私にとってはベッキョンは自我を見せるタイプの人間にカウントされていなかったので、突然、彼の自分の「こうしたい」世界観を提示されると、本当に脳が撃たれて固まるし、そうかこれが心臓を握りつぶされるということかと思いました。

ガチガチに固められた虚構の世界に心臓がつぶれることって、わたしはそうそう経験しないほうなのだけど、〈Bambi〉のMVを見たときに「これは…(お口パッカーン)」となって、しばらくMV見るしかできなかった。結局フルで音源聴いたのは、そのあとのunboxing VLIVEでのことでした。それまで取り憑かれたようにMVを回転させていました。

 

 

 

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―――ネバーランドへの引導を渡しに

 

〈All I Got〉聴きました? あれすごくないですか? もうなんかびっくりしちゃってさ…よくふざけてマライアよろしく「ハアア~~~~~~~(高音)」とかやってたけど、わあこれベッキョンが本気でやったらこうなるんだ…これがベッキョンのみせたかったことなんじゃないか…いままでのはおふざけで…ずっと牙を磨いて今日という日を待っていたんだなと…。頭を殴られた。殴られっぱなしだ。なにをしてくれる。

 

 

そうやって脳をかち割られながらも「これは毒だ!」という感覚はあるんだよ。しかも一番めんどくさい感情「寂しさ」という毒を盛られている。いままでみたいに親密な関係を匂わすだけの世界なんてここまできたらかわいいものだ。「寂しさ」という感情はとてもやっかいだ。自分一人で解決ができない。目を閉じて見ないふりをすることはできるけど、みえなくなってもそこには「ある」。消えない寂しさ。優しい愛でも束縛でもなく、ただまっすぐに「寂しさ」がそこにあると思った。私は弱い人間なので、優しさや愛のようなものは無視できても、寂しさを無視することはできないんだよな。だから今まででいちばん毒が効いている。息ができないような。

 

 

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―――水槽の熱帯魚のように寂しい

 

 

記者会見の記事も、日本語で少し読みました。

すでに3枚目のミニアルバムを発売することとなった感想を聞かれるとベクヒョンは「毎回自分の意見やアイデアを反映させていますが、今回もかなり僕の意見が入っていますので、期待しているし楽しみでドキドキしています。30歳になるので、新しい姿をどう披露しようかとたくさん考えました」と明かした。

「プレッシャーがないと言えば嘘になりますが、常に新しい姿を見せたいという思いで取り組んでおり、素晴らしいスタッフがたくさんいてくれるので、僕も信頼して意見を出せているのだと思います」と明かした。また「30歳という節目で、軍入隊前の最後のプレゼントになればいいと思い、自分のアイデアを本当にたくさん入れました」

「20代は情熱的な音楽をしていたとすれば、30代では緩やかで気楽な気持ちで聴いてもらえる曲をやりたいです。難しいことではありますが、歌詞や感情に耳を傾けてもらえるアーティストになりたいです」

 ああ、自分がこんなに今回のアルバムにベッキョンの自我を感じるのはこういった背景があるんだろうなと思った。切実な空白を前にしてできることが詰め込まれたら、これだけ寂しくなっても、そりゃそうだろうなと思った。

 

でも一方でこんな感じでもあるから、脳が追い付かない。背後に見える洗濯物干しのようなものをみて、ベッキョンも生活してるんだな…と感慨深かった(どういう視点)。

 

 

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―――夜雨の裏側に光は差しますか?

 

比較するのもどうかと思うんだけど、Twitterでも発言したんですが、チェンくんのサウォリ(1集)を聞いたときの感覚とすごく似てるんですよね。

私の好みと完全一致しているわけではないんだけど、作品の中に本人の意思と魂がこれでもかこれでもかとぎゅうぎゅうにつめこまれて、パンパンに膨らんだ感性をぶつけられた。あの衝撃。自分の趣味嗜好を超えて、すごいものに「すごい…」とただただ呆然と立ち尽くす。あれが、あれが、チェンくんのサウォリにはあって、今回のベッキョンにもあると思った。私の気のせいかもしれないけれど。

 

EXOのメインボーカル二人の世界がここまで違うこともすごいと思うし、同時にこの二人(とさらなる才能たち)を抱え込んで成立させてるEXOってグループやっぱり狂ってんな…最高だ…そして「やっぱりEXOがすき…」という気持ちに帰結していくんだよ…軽率さに傷つくし優しい毒だけどそれでも「すげえ」ってなる私の情動はたしかにあるんだよ…。

 


 

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というわけで思いのたけをぶつけた。ふう。書き切ったかな。わからない。でも、ああ、なんだろう、こんなふうに音楽を聴けるのは、本当に幸運なことだと思います。これからも知らないEXOを探り当てたいと思うよ。これからもどうぞよろしくね。